石油エネルギーの99%以上を他国からの輸入に頼る日本。しかも、輸入先は中東の国々に集中している。
その中東の国々では、日本の技術で海水淡水化を行っている。安全保障にしてもビジネスにしても、互恵の関係を考えるなら、中東で求められる のは水とその供給システムのノウハウだろうし、日本が求めるのは安定的な化石エネルギー資源の供給となろう。互いに足らざるを補い合う関係を築くことは、 中東諸国に限らず資源を持つ途上国にとってもメリットがあると思う。
だが、わが国にはこれまで、水に関する技術と、維持・管理を中心にしたビジネスを結び付けて戦略を考える組織もプロジェクトもなかった。戦略なし に、戦術よりももっと以前の局地戦を、技術と知恵だけを頼りに、バラバラにやってきたのだ。海水淡水化プラントの仕事にしても、パーツを提供したりプラン トを作ったりするだけにとどまり、メンテナンス等その先を視野に入れていなかった。
水に関連する専門家たちが、日本の一番の強みとして強調するのが“技術者魂”だ。例えば、時間や工程をきちんと守るとか、仕事に対して誠実であるな ど、“技術者魂”とでも呼ぶべきものが他国の人々にとっては最も衝撃的なのだということをよく聞く。そうした他国の人たちに評価される仕事ぶりを、ODA (政府開発援助)で水道施設をつくるところにとどめていてはいけない。メンテナンスやサービスを行うビジネス分野までうまくつなげることは相手の国にとっ てもマイナスではないはず。プラントを引き渡したら、それでおしまいではなく、そこから先をビジネスとして利益を生むように考える戦略性が、今の日本には 問われている。
例えば、日本には“治水”という知恵がある。洪水や高潮などの水害を防ぐ方法に加え、井戸掘りなどによる水の確保や、安全な水の供給とその維持・管 理、更には「水に関する文化」に至るまで、水をコントロールするさまざまな知恵だ。そこに、原子力発電や鉄道システムという日本の得意技術を加え、産官学 の総力であたれば、各国のインフラ整備に積極的に参入できるのではないだろうか。
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